おそらくここで初めて語られたのが、
”まず観客を作る”というジャニーさんの戦略です。
先輩のステージに「ユー、あがっちゃいなよ!」とジュニアを立たせ、デビュー前の若い子たちのファンを作る。
そのファンたちは彼らの誕生の瞬間からジュニアを応援し、デビューまで、さらにそれ以後もずっと彼らを追い続け応援し続けるのです。
デビュー前の彼らが見られる舞台も当然観にいきます。
ここで、まず熱狂的な観客がつくられます。
こうなったらあとは自由自在。
ストーリーは二の次で、彼らのパフォーマンス(たとえ未熟でも一生懸命)と、様々な仕掛けに観客は喝采するのです。
この「ジャニー喜多川」特集で、評論家の矢野誠一氏がこのことについてこう書いています。
以下引用。
『ジャニー喜多川の功績のひとつにぜひ加えたいものに、独自の観客層を開拓したことがある。
観客が、出演者それぞれの全貌を熟知している固有の層で占められているのは、そのことだけで創造されている舞台が独創的である証差になる。
舞台芸術にあっては、観客も創造の一翼を担うという観点にたつまでもなく、固有の観客層を獲得したことで、ジャニー喜多川の名は小林一三、浅利慶太と並んで、演劇史にとどめられるはずだ。』
さすがに最後の文章には同意できませんが。
ジャニーさんの「なんちゃって」演出は、たしかに「固有の」観客が存在したからこそ可能になりましたが、結果、作品としては未完成かつストーリーに無理のあるものになってしまいました。
これを「独創的」と言えるかどうか疑問です。
何より演じ手にとって、納得できない内容でもありました。
その点でジャニーさんと戦ったのが光一さんです。
光一さんの記事はインタビュアーが萩尾瞳さんです。
自分で「SHOCK」の演出をするようになったのは
『意味が分からないと演じていて楽しくないなと思うようになったから。ジャニーさんはストーリーの流れは考えずに進める人なので。』
と言っています。
また、
『ブロードウェイは演劇的部分が大きいけれど、ラスベガスの方はショー的要素が大きく、観て感じて楽しめますよね。ジャニーさんはどちらかというとショー的な要素が好きなタイプ。だからストーリーは二の次三の次なんです。僕がもうちょっとストーリーをまとめたいとか、キャラクターの気持ちの流れを繋げたいとか時間をかけていると『いつまでそんなこと考えてんの」って、怒られましたね。』
と、こういう話があって、さらに、
(長くなりますが引用します)
『「SHOCK」が始まって5年目くらいの頃かな。自分も25,6歳の大人にもなると、演じていて何かを見出すことができなくなっていたんですよね。自分はジャニーさんからしたら非常に面倒くさかったと思います。散々ジャニーさんに反発してきましたし、ものすごいケンカもしました。でも、この前』
ここからあとは、「ドリボ」を演出したときの若い子たちのエネルギーに触れていて既出の話になります。
ある意味、ジャニーさんの舞台に本気で向き合ったのは光一さんだけです。
みんな数年で舞台を通過してしまうからです。
大人になっても舞台に立ち続けるには、やはり納得できるストーリーが必要でしょう。
ジャニーさんが「エターナルプロデューサー」であるとしても、固有の観客をもつ若い出演者がいなければ、のこされた作品はおそらく再演不可能な単なる思い出になるでしょう。
光一さんが言う
『カテゴリーに拘らずにオリジナルをつくるんだ』というのがジャニーさんの目指すものだとしたら、それを継ぐことができるのは、光一さんだけでしょう。
自身が舞台に立つだけでなく、自身以外の演者が演じたとしても魅力的な作品を作ってこそ、オリジナル作品と言えるでしょう。
ショー的な要素がふんだんにあり、ストーリーに無理のない日本発のオリジナル作品が、光一さんの手によっていつか産み出される、
そんな夢をジャニーさんと共に見続けたいと思います、
ユー最悪だよ❗️
というジャニーさんの言葉が、きっと光一さんの背中を押し続けるに違いない、と信じられますから。
光一さんは舞台に拘ることで、たとえばテレビドラマでの露出を減らすことになりました。
でも、光一さんも言っているように、ジャニーさんと真剣に戦い、新たな舞台を創り出すことで、幸せだ、と言い切れる日々を手にしたのです。
ですから、今後も光一さんの思うように、オリジナル作品を作って欲しいですし、まずは演者としてその作品を多くの人に示して欲しいです!
光一さんは華がありすぎる故に「裏方」にはなれない、と言われていましたね、山下達郎さんがおっしゃったのでしたっけ?
私もそう思います。
ジャニーさんが「究極の裏方」(by 石川直さん)であったのとは対照的に、光一さんは(こういう言い方があるかどうかわかりませんが)完全に「表方」の人でしょう。
その違いを知っていたからこそジャニーさんは「ユー最悪」と言いながらも光一さんの視点や考え方を認めていたのだと思います。
光一さんは「ジャニーさんを超えられない」と言いますが、ジャニーさんの一番近くにいた、という自負があるなら、「ショーとかミュージカルとか関係無いオリジナルを作るんだ」というジャニーさんの意思を継いで、いつかそれを成し遂げてくれると思います。
結局、自分もまた「固有のファン」として、ここまで光一さんを追いかけてきましたし、これからも見続けてゆくでしょう。
そういう意味では、ジャニーさんの戦略に見事に「のっかって」きたわけです。
間もなく光一さん41歳の誕生日がやってきます。
2020年には何を見せてくれるのか。
楽しみが広がります!!